裁判官のかつら着用の是非

ニュー・サウス・ウェールズ州 (NSW) 最高裁の判事は、数週間後に、民事訴訟での判事のかつら (wig) 着用の必要性を問う投票を実施することになった。これは、先週イギリスのイングランドとウェールズ地方を管轄する司法当局が約350年間にわたって続いてきた法廷での伝統の白いかつらの着用を、民事訴訟に限り来年1月1日から廃止すると発表したことを受けたものだ。

イギリスの法廷では裁判官や弁護士などがかつらやローブ court dress を身につける伝統があり、旧イギリス植民地の諸国においてもその習慣が残っている国が多い。2000年の旅でブリスベンのジョージ・ストリート George St. の裁判所の前を歩いているとき、たまたまかつらとローブを着けたまま他の建物へ移動中の裁判官を見かけたことがあった。
NSW州では8年前にも同様の投票が実施されており、このときは「権力の象徴」としてかつらの着用は継続すべきとの結論に至っている。西オーストラリア州では既に民事訴訟でのウイッグ使用を廃止、オーストラリア高等裁判所も1988年同制度の廃止を決定している。

イギリスでの裁判官の正装の起源は、14世紀のエドワード3世時代とされるが、弁護士や裁判官がかつらを着用するようになったのは1680年代。18世紀までは白い粉で色をつけたかつらを使用していたが、1822年に加工が不必要な白や灰色の馬毛を使用したかつらが作られ、現在でもこのかつらは当時と同じ製造会社で作られている。
イギリス最高裁判所前には伝統のかつら屋があり、新任裁判官はこのかつら屋でかつらを買い求める。このかつらは、決して洗ってはいけないとされる伝統があり、ベテランの裁判官ほどかつらが汚れているという噂まである。
法廷独特のかつらやガウンは、「権威の象徴」とされるほか、裁判に関わっている人物が誰なのかを外部から判別しにくくするという効果が挙げられているが、英国の伝統消失を懸念する声が聞かれる一方で、刑事事件を担当する裁判官や弁護士はこれまでどおりかつらの着用が義務付けられていることから、かつらの需要がまったくなくなるわけではないという。イギリスでのかつら着用の是非は、政府が15年前にこの問題の検討を始めて以来、何度も議論の対象となっていた。
裁判官が着用するかつらは、白い縮れ毛が垂れ下がった「フルボトム」と呼ばれる儀式用のかつらと、法廷で着用する「ボブウィグ」または「ベンチウィグ」と呼ばれるかつらがあり、前者はおよそ2000ポンド(約40万円)、後者は800ポンド(約16万円)ほどであるという。今回のかつら着用取りやめの決定により、新任裁判官にかつらを支給するための費用、およそ1万5千ポンド(約300万円)が節約できるという話もある。

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