ドッグ・フェンス dog fence

オーストラリア、特に大陸の東南部の内陸を走ると、ちょっと信じられない風景にお目にかかることがある。それは、延々とどこまでも続くフェンス。
山を越え、川を渡り、塩湖や沙漠だろうが、国立公園だろうが、ロケット発射場だろうが、時には道路までをも横切って延びている。
それは、ドッグ・フェンス dog fense あるいはディンゴ・フェンス dingo fence と呼ばれ、野生の犬(ディンゴ dingo)から家畜の羊や牛を守るために設置されたもので、その長さは延べ5千数百キロ(データによっては、8千キロを超えるという数字もある)にも及ぶ。あの万里の長城をも軽々と凌いで世界最長の工作物だともいわれている。(オージーに言わせると、万里の長城と同じように宇宙からでも見える?そうだ。)
南オーストラリア州の Nullarbor Cliffs にあるセドゥナ Ceduna から始まり、地域によって、(南オーストラリア)、”barrier fence”(クイーンズランド)などと呼び名を変えながら、クイーンズランド州のトゥームンバ Toowoomba の西、ビュナヤ Bunya 国立公園の近くで終る。
ドッグ・フェンスは、オーストラリアの牧畜業の進展に伴い1880年代から作られ始め、1885年にはほぼ現状の状態が完成したそうだ。もちろん当時は木製の柱杭によるものだったが、今は順次スティール製のアングルを柱にしたものに取り替えられている。
また、西オーストラリア州にはドッグ・フェンスはなく、その代わりラビット・フェンス “rabbit proof fence” と呼ばれる兎の侵入を防ぐための同様のフェンスがある。

dog gate
内陸部のローカルな路線を走っていると道路がフェンスで遮られていることがあるそうだが、こんなときは “Dog Gate” と呼ばれる門扉を手で押し開けて通り抜け、後をきちんと閉めておかなければならない。
私たちがバスで走った国道1号線のハイウェイでは、さすがにこのドッグ・フェンスで走行を妨げられことはなかったと記憶しているが、道路と並行してフェンスが延々と続いているところがあり、興味深く眺めたことを覚えている。
このときの我々としては、このフェンスは牛や羊が道路に飛び出さないように置かれたもの、という理解だったのだが、どうやらまったく逆の目的だったようだ。
オーストラリアに住む人たちでも、都会の人はこのドッグ・フェンスの存在を知らない人もいる。初めてアウトバックをドライブして、道路を塞いでいるこのフェンスに出くわし戸惑うこともあるという。
州政府は2003年に遂にドッグ・フェンスの配置を示した地図を作成した。(右のの画像をクリックしてみていただきたい。)
なにしろこれだけの長さだから、その設置やメンテナンスには膨大なお金と労力を要する。
それぞれの州で、フェンスの設置基準・管理方法・資金援助などについて、”Dog Fence Act” という法律を定めており、”dog gate” を開けっ放しで放置したときの罰則規定までが記載されている。
また、政府がドッグ・フェンスの状態を常に巡回・点検ししており、そのための専従職員を抱えている。
さすが、牧畜王国のオーストラリアならではのことである。










